さよなら だけ だっ た その 一 言 で 全て が わかっ た。 白銀の風 アーク 第五話『幸言の必要性』

プロローグ/全ての言葉はさよなら

さよなら だけ だっ た その 一 言 で 全て が わかっ た

正直読まなければ良かった。 『絶歌』だって絶対読むまいと誓っているのになんで読んでしまったのか。 デビュー作から全て追ってきている窪さんがどうこの事件と向き合ったのか知りたかったのか。 本書は神戸で起きたあの事件をモデルにしている。 もちろんあくまでもフィクションでありエンタメ作品である。 私の気持ちの問題なのかもしれないが本作はあの事件を完全に消化して新たな物語として読ませる力はない。 『絶歌』の出版と運悪く重なってしまったことも一因でまだこの事件が世の中で終わっているわけではない。 だからどうしても重なる。 事件の場所も概要もほぼ同じ。 ゆえにフィクションとして読めない。 桐野さんの『グロテスク』などは完全にエンタメ作品として読めるのだからここは作者の力量か、事件の大きさの違いなのか。 遺族の気持ちを考えるといくら小説とはいえ常に苦い思いがこみ上げてきて登場人物の誰にも共感できなかった。 最終章も言い訳がましくて頂けない。 大金をちらつかせてくる出版社の人間には近づかないことと言う文章があるが、実際は逆だと言われている。 やりきれない。 だからこそこの小説が薄っぺらく思われてしまう。 辛口になってしまったが、窪さんにしか書けない窪さんらしい作品をもっともっと読みたい。 そんな期待も込めて… モチーフは神戸連続児童殺傷事件。 この事件の犯人が捕まった時、学校帰りの私の元に母が飛んできて「犯人が14歳だった」と血相を変えて言ったのを覚えています。 忙しい母とは普段ニュースの話なんてしなかったので、それだけでこの事件が多くの大人に与えた影響を垣間見たような気がしました。 肝心の、当時少年とあまり年の変わらなかった私自身の感想はといえば、当時から今までずっと 「なぜそんなことしたの?」「何が少年にそんなことをさせたの?」 ということに尽きます。 今でも私はこの答えを探してる。 この本と同時期に発売された『絶歌』は読んでないんですけど、この本と前後して当時の資料を見直しました。 けどやはりいまだに疑問の答えは見つかってないです。 この本に限って言えば、まず現実の事件をモチーフにしているとはいえ、少年の生い立ちにフィクション部分が多くて参考にはならないのかなと。 あくまで個人の感想ですが、この作品は実際の少年の生い立ちより『異常性』が多く加えられていて、特殊な環境だったから事件に走ったんだという、ある種安易な道が提示されていたなと感じました。 ただし物語の中で少年Aは自分自身の境遇を「特別だ」と思われることに関して違和感を感じているという描写はある もちろん「少年の環境の悲劇性・特殊性」が付加されたからこそ、少女と作家が少年に惹かれるというこの物語が成り立つのは解ります。 が、実際の事件がモチーフですとここまではっきりわかってしまうとやはり同情はしづらい。 ただ、作者さんは「登場人物への同情や感情移入」を読者に求めているわけではないのかなとも思いました。 タイトルは『さよなら、ニルヴァーナ』。 どなたかがお書きになっていましたが、ニルヴァーナとは涅槃のことで「悟りの境地」とか「人間の本能から来る迷いが無い状態」という意味だそうです。 少年Aにとっては作中にあった『自分の神様』を見つけた状態、迷いなく人を殺す状態がニルヴァーナの境地であり、少年に憧れる少女と作家にとっては、少年Aに近づくことがニルヴァーナへの近道だった。 しかし終盤の展開により、少年も少女も作家も、ニルヴァーナの境地に「さよなら」することになってしまう。 そういうストーリーを追っていると、この作品の結論は『悟り状態に至った殺人行為への否定』だととれそうですけど、 『ニルヴァーナの境地に至れば人は人を殺す、それは止められない』と言った悲観的な理屈(この環境なら人殺しても仕方ないんだよ、みたいな諦めきってしまった感じ)も読み取れます。 複数の違った結論を提示しているところは実際の社会と近いのかなと思いました。 この作品は加害者・被害者の家族・加害者に憧れる第三者という立場の人が代わる代わる語り手になっています。 この中の誰かの立場を強く否定する感じではなく、登場人物全員をまんべんなく否定していたり否定して無かったり…と言った感じ。 だけど一つだけ警鐘めいたものを感じた個所がありました。 この物語の中では(実際もそうなのかもしれないけど)、『更生完了』として野に放たれた少年は、あくまで『更生が成功している』として扱われています。 少年の更生には国家的なプロジェクトが組まれ、それで失敗したら、『更生』を前提としている刑罰そのものの理屈が覆されかねない。 つまり実は構成してないかもしれないのに成功したことにしなくてはいけない……的な陰謀がありそう。 刑罰の歴史において『少年の更生』はまだ手探り段階で、成功しているかどうかを確認した例は少ないのに、それでも野に放たれることの怖さを感じます。 いかに更生したかについてはこの作品でも他の資料でも同じような経過をたどっていましたが、成功したかどうかは少年が死ぬまでわかりませんし、かといって差別的な目で見すぎるのもどうかと思うし、なかなか難しいです。 最後に、この話の冒頭部分に戻りますが、 冒頭部分の語り手は作家志望(後に作家になる)の女性なんですけど、この人がすでに作家になっている人やその作品にものすごい嫉妬の感情を抱いていて、その感情の醜さがありありと描かれているので息が詰まりました。 嫉妬の感情は美しくはないけど、生きる上である意味強烈なパワーになるものだなぁ。 どうでもいいけど「ニルヴァーナ」って言葉の使われ方が唐突すぎない?タイトルにする分にはいいかもしれないけど、作中での使われ方があまりにも無理しすぎだと思う。 この作品、ものすごい熱量を持っている。 一気に読ませる力を持っている。 構成もうまい。 文章もうまい。 ただ、その向かっている方向がおかしいし、納得できないし、認めたくもない。 フィクションなのはわかるけど、ここまで現実に沿った設定の中でのこの物語は常識のある人なら書けないし、書いてはいけないものだと思う。 たとえ小説であったとしても。 小説家として表現したいものを書くのは結構だが、どう考えても題材をここにとるべきではないし、設定をここまで現実に沿わせる必要がないと思う。 話題づくりとしか思えないでしょ。 たとえフィクションだったとしても少年Aを美化しすぎだし、それに恋愛する女性たちの描写は反吐が出そうだった。 人間の中身を見たい?は?ただの異常性癖を表現者としての欲求に模して文学的に昇華したつもりになっているのがどうにも許せない。 どんなに力量があっても合わない作家っているんですね。 (って書いちゃうと「顔も見せず、名前も明かさず、刃を向ける弱虫たち。 」って思われちゃうのかな。。。 ) 読むのが苦しかった。 何度も中断し、何度も深呼吸し、そしてまた読み続けた。 なぜこんなにも苦しい物語を綴るのだろう。 なにがそうさせるのだろう。 そしてなぜ読むのだろう。 地獄だ。 これは地獄だ。 人が生まれ生きていくなかでもっとも過酷な地獄だ。 窪さんはきっと血を吐く思いでこの地獄を文字にしていったはず。 だから血を吐く思いの覚悟で対峙しなければ読み終えることができなかったのだ。 少年Aと彼に囚われた3人の女たち。 最初に読んだときと、二度目に読んだときと、一人の少女の印象が全く入れ替わっていた。 Aに恋い焦がれる少女は、Aとその罪、そして被害者、その全てを自分の中に取り込み全能の母、あるいは聖女としてそこにあると思えたのに。 二読目にその聖性はまったく感じられなくなっていた。 彼女の思いも、その存在も、薄く思えてしまった。 なぜだろう。 あぁ、そうか。 私の中に激しい怒りがあったのだ。 その怒りに目をつぶっていたのだ。 見ないふりをしていた怒りが心のふたを開けてしまったのだ。 私は母だ。 正真正銘の母親だ。 母親として怒りが悲しみを凌駕してしまった。 被害者の母であるなっちゃんとともに深い悲しみを怒りで包み、放出してしまったのだ。 この物語は私の心に深く打ち込まれた杭となる。 人と人が出会い、そこで生まれる関係こそが救いに繋がる。 すれ違ったり、離れることになるかもしれないけれど、出会わないと何も始まらない。 出会い・すれ違い・別れる、これこそが人生の尊さであるはず。 出会いによって産まれた奇跡がこの小説の唯一の救いだと思った。 莢の存在が大きいよなぁ。 この少女の揺れ動く心が読者を掴んで離さない。 出会いの奇跡を起こすのは彼女だ。 何度も泣かされた。 あの食卓を囲むシーンはどうしようかと思った。 あんなもんこっちの感情が追いつかないわ…。 凄いとしか言いようがないんだが、各章ホントに凄い。 いつ壊れてもおかしくない繊細な、ギリギリの感情のはずなのに凄い強度と説得力。 少年Aの視点の『霧と炎』なんて特に。 神戸事件をモチーフにした物語で、だからこそ私は書店で手にとった。 一人の作家が、あの事件をどのように表現するのか?その興味のみ。 どうしても納得できなかったのは、事件の概要をすっぽりこの物語に埋め込んでしまったこと。 だからこそ、物語の中盤まで、私はひどく残念な気持ちで読むこととなった。 あの事件は、決して誰かが真似るべきではなく、酒鬼薔薇という存在を生産してはならない。 だが、この作者は創ってしまったのである。 彼が犯した罪は、彼だけのものであり、彼のそれまでの人生であるはずなのに、この物語で都合よく使われたエピソードのように感じざるを得なかった。 また、多くの視点が入り混じったために、それぞれの人物の内面の変化に唐突さを感じたのも事実である。 登場人物はどれも作中でしっかり生きており、愛しさを感じる。 だからこそ私は、この作品には、現実に起きた神戸事件を取り込んでほしくなかった。 作者自身が消化したものを、全くの創作として読みたかった。 長い期間神戸事件を考え続けた立場としては、腑に落ちない物語だった。 参考文献をベースにした感が強くある。 作者自身が事件を創作したのであれば、全て納得して読めた。 それだけ登場人物らの傷みが生きている。 もったいない、という感想に尽きる。

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#2 さよなら、君と。2

さよなら だけ だっ た その 一 言 で 全て が わかっ た

18歳未満の方、また、そのような内容に抵抗のある方はウィンドウを閉じて下さい。 責任は一切負えません。 「北島!何をしている!!」 黒沼の怒声がキッドスタジオに飛び交う。 マヤはひきつった表情を浮かべ、目の前の一真役である桜小路を見つめる。 「おまえは誰を愛している!!目の前の一真じゃないのか!」 その言葉に必死で気持ちを掴もうとする。 でも、マヤの心に浮かぶのは・・・一真ではなく・・・真澄だった。 梅の谷で月影の紅天女を見た後、マヤは不思議な体験をした。 川辺を挟み速水と対面した時である。 体が何かに強く引き寄せられ気づけば魂(こころ)が体を離れ、・・・真澄と抱き合っていた。 その日を堺に加速度的に、真澄への想いが募る。 初めて速水を心の底から好きだと感じた日はそう遠くないのに・・・信じられない程、彼を求めていた。 阿古夜になろうとすれば、する程、梅の谷での体験を思い出し、仮面が被れないのだ。 「・・・もういい・・・北島、おまえは帰れ・・・」 黒沼の言葉にマヤは凍りついたように固まる。 「・・・先生・・・」 すがるように黒沼を見つめるが、その瞳は完全にマヤを突き放していた。 たまらず、その場から逃げるようにスタジオを出る。 「・・・マヤちゃん」 「・・・よせ」 マヤを追いかけようとする桜小路を止める。 「・・・でも・・・」 納得のいかないように黒沼を見る。 「・・・アイツが自分で解決する事だ」 「・・・真澄様、どうです?」 頬を紅く染め、ウェディングドレスを着た紫織が彼を見つめる。 そのドレスはエレガントで紫織によく似合っていた。 「・・・綺麗ですよ・・・とても・・・」 言葉とは裏腹に真澄の表情は曇っていた。 今日、真澄は一月後に行われる紫織との結婚式のドレスを見ていたのだ。 結婚という逃げられない現実が真っ直ぐに真澄に突きつける。 俺が選んだ道だ・・・。 自分に納得させるように心の中で呟く・・・。 だが・・・。 それでもやり切れない気持ちがあった。 彼の胸の中にマヤの存在が大きく占めていた。 実るはずのない恋・・・。 決して気持ちを口にする事の許されない恋・・・。 そして、忘れる事のできない生涯で一度の恋だった・・・。 「・・・おまえがどうして阿古夜を演じられないか教えようか」 スタジオの裏にある土手に座り、茜色に染まる空を見つめていると、黒沼の声がした。 マヤはおずおずと受け取った。 「・・・当ててみようか・・・おまえには好きな奴がいる。 「・・・そして、その恋は叶わない・・・」 黒沼の言葉に涙が溢れてくる。 速水が恋しくて、恋しくて、胸が熱くなる。 「・・・どうしようもなく・・・その人の事が好きなんです・・・。 今、こうしていても頭から、心から離れなくて・・・。 でも、言えない・・・。 好きだなんて・・・言ってはいけないんです・・・。 あの人を困らせてしまうから・・・」 マヤの言葉に黒沼の胸にも切ないものが溢れる。 「・・・速水真澄か・・・」 黒沼の言葉に驚いたように見つめる。 「・・・図星みたいだな・・・」 苦い笑みをマヤに向ける。 「・・・はい。 私、速水さんが好きです・・・」 どんなに速水を想っているのか、その表情を見ればわかった。 「今のおまえに足りないものは・・・愛される喜びだ・・・。 だから、阿古夜が演じられない・・・」 黒沼の言葉に胸が痛む。 「・・・どうすれば・・・演じられるんですか?」 不安そうに言葉を繋ぐ。 「・・・愛される事だ・・・おまえが望むままに・・・。 おまえの好きな相手にな」 愛される事・・・。 速水さんに私が・・・。 「・・・そんなの・・・無理です・・・」 「・・・北島、おまえは何もしない前から諦めるのか?」 黒沼の言葉が波紋を広げるように心を締め付ける。 「・・・当たって、砕けろだ!紅天女を演じたいなら・・な・・・」 黒沼はそう言うと、立ち上がり、マヤを一人残しどこかへと消えた。 愛される事・・・。 マヤの耳に張り付いてしまったかのようにその言葉が幾度も木霊していた。 「・・・社長、まだお仕事ですか?」 午後11時過ぎ、水城が驚いたように社長室にいる真澄を見る。 「・・・君こそ、まだいたのか」 書類から視線を水城に向ける。 「・・・やりかけの仕事があったものですから・・・でも、もう帰ります」 「・・そうか。 ご苦労だった」 再び書類に視線を戻し、見つめる。 「・・・社長はお帰りにはならないんですか?」 仕事をやめそうにない真澄に言う。 「見ての通り、仕事がたまっているからね」 山積みに置かれた書類を見つめ、小さくため息をつく。 「・・・何も今日やらなくても・・・」 梅の谷から戻った真澄はいつも以上の仕事をこなしていた。 それはまるで何かから逃れるように・・・。 「・・・お体を壊します。 そんな無茶な仕事の仕方をしていたら」 日ごとに感情を失っていくような真澄の表情に、水城の心配は限界にきていた。 「・・・無茶かどうかは俺が決める事だ・・・」 全く水城に耳を傾けず、真澄は目の前に置かれた書類に次々と手を伸ばしていった。 その姿が何だか痛々しい・・・。 「・・・何をそんなに自棄になってるんですか」 つい、余計な一言が口から漏れる。 その言葉に、真澄の手が止まる。 「・・・忘れたいんだ・・・」 苦しそうな表情を浮かべ、呟く。 そう、俺は忘れたいんだ・・・あの子の存在を・・・。 愛してしまった事を・・・。 あの子を思う苦しい想いから解放されるなら・・・俺は何だって・・・。 「・・・真澄様・・・」 真澄の悲痛な表情に水城はそれ以上言葉が出て来なかった。 なぜ出会ってしまったのだろう・・・。 あの人と私ではつり合わないのに・・・。 年も違えば・・・身分も違う・・・。 「・・・年も姿も身分もなく出会えば互いに惹かれあう・・・か」 そのセリフがマヤの心に響く。 「・・・速水さんと惹かれあうなんて事・・・ある訳ないよね」 自信なさそうに月を見上げる。 琥珀色に輝く、三日月が頼りなく見えた。 「・・・どうしよう・・・私は、どうしたらいいの・・・」 黒沼の言葉があれ以来、マヤの頭から離れない。 気づけば、大都芸能のビルの前に佇んでいた。 見上げると、社長室にはまだ明かりがある。 ・・・速水さん・・・。 愛しさが胸を締め付ける。 一度でもいいから・・・速水さんに愛されたい・・・。 速水さんに・・・抱きしめてもらいたい・・・。 例え、偽りの愛であっても・・・。 胸の中を熱い欲望が騒ぎ立てる。 全身の血が煮えだ切ったように熱い・・・。 強い衝動がマヤの中にある女の部分を目覚めさせた。 「・・・速水さん・・・」 突然、名前を呼ばれ、書類から顔を上げる。 口に咥えていた煙草を落としそうになる。 「・・・マヤ・・・」 どうして、彼女がここに? 思いがけない彼女の登場に心が大きく揺れる。 「・・・どうして・・・ここに?」 素直な疑問が口をつく。 真澄の問いに、マヤがじっと彼を見つめる。 その視線を受け、体中が何だか熱くなる。 「・・・紅天女・・・」 小さく、言葉を口にする。 「・・紅天女が演じられないんです。 黒沼先生に言われました。 私が役を掴む為には、愛される事だと・・あなたに」 体中が震え出す。 真澄の顔が驚きに変わるのがわかる。 「・・・マヤ・・・」 彼女の言葉に何と言葉を続けたらいいのかわからない。 「・・・好きです。 速水さん。 ずっと、好きでした。 だから・・・」 すがるような瞳で真澄を見つめる。 「・・・あなたが婚約している事は知っています。 だから・・・」 そこから先の言葉が出て来ない。 苦しくて・・・切なくて・・・。 涙が浮かぶ。 「・・・だから、私を抱いて下さい・・・。 一度だけでいいですから・・・。 あなたに迷惑をかけるような事はしません・・・。 だから・・・たった一度だけ・・・私を・・・」 マヤの言葉に正気を失いかける。 それは真澄にとって甘美な言葉だった。 「・・・あなに愛されたい・・・一度でいいから・・・」 甘い誘惑が彼の心を捕らえる。 ずっと、想い焦がれて目の前の彼女が・・・彼を好きなどと言っているのだ。 ずっと、嫌われていると思っていたのに・・・。 「・・・本気か・・・」 椅子から立ち上がり、ゆっくりとマヤに近づく。 触れ合える距離に来ると、そっと、彼女の頬に触れる。 そして、突然のキス・・・。 「・・・んっ」 深く重なる唇にマヤの声が漏れる。 「・・・速水・・さん・・・」 途切れ、途切れに彼の名を呼ぶ。 唇から伝わる甘い痺れに力が抜ける。 「・・・これでも、俺に抱かれたいか?」 唇を放し、愛しそうに彼女を見つめる。 マヤは真澄の問いかけに迷う事なく頷いた。 真澄の中の何かが狂い始める。 ベットの上に彼女を寝かせ、身につけているものを一枚ずつ剥がす。 その度に恥ずかしそうに彼女が頬を染めた。 熱い瞳が彼女を見つめていた。 それは初めてマヤが見るもう一人の真澄だった。 その瞳に見つめられているだけで、体中が溶けそうになる。 頭の芯が真っ白になり、何も考えられない・・・。 真澄の唇がゆっくりと体中を這う。 細い、骨ばった長い指が彼女の体中を撫でる。 「・・・あっ・・・」 初めての感覚に吐息が漏れる。 そして、その感覚は段々強いものへと変わる。 彼女を裸体にし、じっと見つめる。 その肌の白さと艶かしさにドキッとする。 体中が火に焼かれたように熱さを増し、夢中で自分の衣服を脱ぎ、肌を合わせた。 「・・・あぁっっ」 初めての挿入に彼女の表情が歪む。 「・・・痛いか?」 ハッとし、腕の中の彼女を見つめる。 瞳に涙を耐え、首を左右に振る。 彼女が無理をしているのがわかる。 進入を止め、腰を引く。 そして、まだ、あまり潤っていない、彼女の花びらを口にする。 「・・あぁっ!」 突然の強い刺激に驚いたように声を上げる。 「・・・速・・水さ・んっ・・・」 真澄の唇が触れている事に気づくと、恥ずかしさで足を閉じようとする。 真澄はそれを許さず、両手で太腿を掴み、さらに足を開かせた。 薄っすらとピンク色に染まったマヤ自身がハッキリと見える。 真澄が与える感覚と見つめられているという羞恥心に脈が速くなり、下半身が熱くなる。 真澄はゆっくりと、時間をかけて彼女の中を舐めた。 甘い感覚に耐えるように唇を噛み、枕を強く掴む。 彼女の中は濡れていた。 吸いつくせない程の蜜が溢れ出し、蕾が大きくなる。 「・・・速水・・さんっ・・・私・・・っ」 潤んだ瞳でマヤが耐え切れなさそうに訴える。 マヤの限界が近い事を知ると、唇を離し、下半身を繋げる。 そして、彼を深い部分へ飲み込んでいく。 最初の進入の時とは違い、今度は甘い衝撃が体中を伝わった。 真澄が動く度にマヤの中の内壁が締め上げ、その甘い感覚に、夢の中を彷徨っているようだった。 段々、動きは早くなり、真澄自身がマヤの中で大きさを増す。 限界が近い事を知ると、真澄はマヤの中から出ようとした。 「・・・やっっ」 マヤが抵抗するように、真澄に足を絡める。 「・・・マヤ・・・」 驚いたように彼女を見つめる。 「・・・速水さんの全てが欲しいの・・・」 真澄を真っ直ぐに見つめ、口にする。 その言葉に、その瞳にどうかしてしまいそうだった。 「・・・マヤ・・・」 愛しそうに唇にキスをする。 そして、真澄は再びマヤの中で動き、限界を迎えた。 「・・・・あぁぁぁっっっ!!!!」 真澄の全てがマヤの中に注がれ、マヤはベットの上で崩れ落ちた。 そして、真澄も繋げたままマヤの上に崩れる。 部屋に二人の荒い呼吸が木霊する。 甘いけだるさが二人を包む。 真澄は繋がった場所が離れないようにそっと、マヤの横に移った。 マヤはまだ、自分の中にいる真澄を感じて幸せだった。 繋がった場所から彼の鼓動を感じる。 触れ合う素肌と素肌に愛しさが増す。 「・・・速水さん・・・」 嬉しそうに彼の名を呼ぶ。 「・・・うん?」 甘えたような彼女の声に表情が緩む。 「・・・私、忘れません・・・今夜の事は・・・」 華奢な腕が彼を包む。 「・・・もう少し、このままで・・・」 そう言い、マヤはゆっくりと瞳を閉じ・・・いつしか眠りについていた。 ・・・マヤ・・・。 彼女の寝顔を見つめ、切ない想いに駆られる。 ずっと、このまま抱いていたい・・・。 一つになっていたい・・・。 しかし・・・。 真澄には目の前の結婚をどうする事もできなかった。 本当は、彼女の言葉を聞いた時、自分も愛していると、告げたかった。 偽りのない気持ちを伝えたかった。 この夜が明けない事を祈った。 マヤと一つになっているこの時間が永遠に続く事を祈った。 だが・・・夜は明け・・・現実の時が再び二人を引き離す。 「・・・さよなら・・・速水さん・・・」 マヤは眠ったままの真澄を残して、一人ホテルを出た。 真澄に愛された想いを胸に歩き出す・・・。 紅天女に向かって・・・。 そのれから半月後、マヤは見事に紅天女を演じ、上演権を掴んだ。 そして、真澄は一月後、マヤへの想いを抱えたまま紫織と結婚をしたのだった。

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#3 【兎虎】さよならをもう一回

さよなら だけ だっ た その 一 言 で 全て が わかっ た

18歳未満の方、また、そのような内容に抵抗のある方はウィンドウを閉じて下さい。 責任は一切負えません。 「北島!何をしている!!」 黒沼の怒声がキッドスタジオに飛び交う。 マヤはひきつった表情を浮かべ、目の前の一真役である桜小路を見つめる。 「おまえは誰を愛している!!目の前の一真じゃないのか!」 その言葉に必死で気持ちを掴もうとする。 でも、マヤの心に浮かぶのは・・・一真ではなく・・・真澄だった。 梅の谷で月影の紅天女を見た後、マヤは不思議な体験をした。 川辺を挟み速水と対面した時である。 体が何かに強く引き寄せられ気づけば魂(こころ)が体を離れ、・・・真澄と抱き合っていた。 その日を堺に加速度的に、真澄への想いが募る。 初めて速水を心の底から好きだと感じた日はそう遠くないのに・・・信じられない程、彼を求めていた。 阿古夜になろうとすれば、する程、梅の谷での体験を思い出し、仮面が被れないのだ。 「・・・もういい・・・北島、おまえは帰れ・・・」 黒沼の言葉にマヤは凍りついたように固まる。 「・・・先生・・・」 すがるように黒沼を見つめるが、その瞳は完全にマヤを突き放していた。 たまらず、その場から逃げるようにスタジオを出る。 「・・・マヤちゃん」 「・・・よせ」 マヤを追いかけようとする桜小路を止める。 「・・・でも・・・」 納得のいかないように黒沼を見る。 「・・・アイツが自分で解決する事だ」 「・・・真澄様、どうです?」 頬を紅く染め、ウェディングドレスを着た紫織が彼を見つめる。 そのドレスはエレガントで紫織によく似合っていた。 「・・・綺麗ですよ・・・とても・・・」 言葉とは裏腹に真澄の表情は曇っていた。 今日、真澄は一月後に行われる紫織との結婚式のドレスを見ていたのだ。 結婚という逃げられない現実が真っ直ぐに真澄に突きつける。 俺が選んだ道だ・・・。 自分に納得させるように心の中で呟く・・・。 だが・・・。 それでもやり切れない気持ちがあった。 彼の胸の中にマヤの存在が大きく占めていた。 実るはずのない恋・・・。 決して気持ちを口にする事の許されない恋・・・。 そして、忘れる事のできない生涯で一度の恋だった・・・。 「・・・おまえがどうして阿古夜を演じられないか教えようか」 スタジオの裏にある土手に座り、茜色に染まる空を見つめていると、黒沼の声がした。 マヤはおずおずと受け取った。 「・・・当ててみようか・・・おまえには好きな奴がいる。 「・・・そして、その恋は叶わない・・・」 黒沼の言葉に涙が溢れてくる。 速水が恋しくて、恋しくて、胸が熱くなる。 「・・・どうしようもなく・・・その人の事が好きなんです・・・。 今、こうしていても頭から、心から離れなくて・・・。 でも、言えない・・・。 好きだなんて・・・言ってはいけないんです・・・。 あの人を困らせてしまうから・・・」 マヤの言葉に黒沼の胸にも切ないものが溢れる。 「・・・速水真澄か・・・」 黒沼の言葉に驚いたように見つめる。 「・・・図星みたいだな・・・」 苦い笑みをマヤに向ける。 「・・・はい。 私、速水さんが好きです・・・」 どんなに速水を想っているのか、その表情を見ればわかった。 「今のおまえに足りないものは・・・愛される喜びだ・・・。 だから、阿古夜が演じられない・・・」 黒沼の言葉に胸が痛む。 「・・・どうすれば・・・演じられるんですか?」 不安そうに言葉を繋ぐ。 「・・・愛される事だ・・・おまえが望むままに・・・。 おまえの好きな相手にな」 愛される事・・・。 速水さんに私が・・・。 「・・・そんなの・・・無理です・・・」 「・・・北島、おまえは何もしない前から諦めるのか?」 黒沼の言葉が波紋を広げるように心を締め付ける。 「・・・当たって、砕けろだ!紅天女を演じたいなら・・な・・・」 黒沼はそう言うと、立ち上がり、マヤを一人残しどこかへと消えた。 愛される事・・・。 マヤの耳に張り付いてしまったかのようにその言葉が幾度も木霊していた。 「・・・社長、まだお仕事ですか?」 午後11時過ぎ、水城が驚いたように社長室にいる真澄を見る。 「・・・君こそ、まだいたのか」 書類から視線を水城に向ける。 「・・・やりかけの仕事があったものですから・・・でも、もう帰ります」 「・・そうか。 ご苦労だった」 再び書類に視線を戻し、見つめる。 「・・・社長はお帰りにはならないんですか?」 仕事をやめそうにない真澄に言う。 「見ての通り、仕事がたまっているからね」 山積みに置かれた書類を見つめ、小さくため息をつく。 「・・・何も今日やらなくても・・・」 梅の谷から戻った真澄はいつも以上の仕事をこなしていた。 それはまるで何かから逃れるように・・・。 「・・・お体を壊します。 そんな無茶な仕事の仕方をしていたら」 日ごとに感情を失っていくような真澄の表情に、水城の心配は限界にきていた。 「・・・無茶かどうかは俺が決める事だ・・・」 全く水城に耳を傾けず、真澄は目の前に置かれた書類に次々と手を伸ばしていった。 その姿が何だか痛々しい・・・。 「・・・何をそんなに自棄になってるんですか」 つい、余計な一言が口から漏れる。 その言葉に、真澄の手が止まる。 「・・・忘れたいんだ・・・」 苦しそうな表情を浮かべ、呟く。 そう、俺は忘れたいんだ・・・あの子の存在を・・・。 愛してしまった事を・・・。 あの子を思う苦しい想いから解放されるなら・・・俺は何だって・・・。 「・・・真澄様・・・」 真澄の悲痛な表情に水城はそれ以上言葉が出て来なかった。 なぜ出会ってしまったのだろう・・・。 あの人と私ではつり合わないのに・・・。 年も違えば・・・身分も違う・・・。 「・・・年も姿も身分もなく出会えば互いに惹かれあう・・・か」 そのセリフがマヤの心に響く。 「・・・速水さんと惹かれあうなんて事・・・ある訳ないよね」 自信なさそうに月を見上げる。 琥珀色に輝く、三日月が頼りなく見えた。 「・・・どうしよう・・・私は、どうしたらいいの・・・」 黒沼の言葉があれ以来、マヤの頭から離れない。 気づけば、大都芸能のビルの前に佇んでいた。 見上げると、社長室にはまだ明かりがある。 ・・・速水さん・・・。 愛しさが胸を締め付ける。 一度でもいいから・・・速水さんに愛されたい・・・。 速水さんに・・・抱きしめてもらいたい・・・。 例え、偽りの愛であっても・・・。 胸の中を熱い欲望が騒ぎ立てる。 全身の血が煮えだ切ったように熱い・・・。 強い衝動がマヤの中にある女の部分を目覚めさせた。 「・・・速水さん・・・」 突然、名前を呼ばれ、書類から顔を上げる。 口に咥えていた煙草を落としそうになる。 「・・・マヤ・・・」 どうして、彼女がここに? 思いがけない彼女の登場に心が大きく揺れる。 「・・・どうして・・・ここに?」 素直な疑問が口をつく。 真澄の問いに、マヤがじっと彼を見つめる。 その視線を受け、体中が何だか熱くなる。 「・・・紅天女・・・」 小さく、言葉を口にする。 「・・紅天女が演じられないんです。 黒沼先生に言われました。 私が役を掴む為には、愛される事だと・・あなたに」 体中が震え出す。 真澄の顔が驚きに変わるのがわかる。 「・・・マヤ・・・」 彼女の言葉に何と言葉を続けたらいいのかわからない。 「・・・好きです。 速水さん。 ずっと、好きでした。 だから・・・」 すがるような瞳で真澄を見つめる。 「・・・あなたが婚約している事は知っています。 だから・・・」 そこから先の言葉が出て来ない。 苦しくて・・・切なくて・・・。 涙が浮かぶ。 「・・・だから、私を抱いて下さい・・・。 一度だけでいいですから・・・。 あなたに迷惑をかけるような事はしません・・・。 だから・・・たった一度だけ・・・私を・・・」 マヤの言葉に正気を失いかける。 それは真澄にとって甘美な言葉だった。 「・・・あなに愛されたい・・・一度でいいから・・・」 甘い誘惑が彼の心を捕らえる。 ずっと、想い焦がれて目の前の彼女が・・・彼を好きなどと言っているのだ。 ずっと、嫌われていると思っていたのに・・・。 「・・・本気か・・・」 椅子から立ち上がり、ゆっくりとマヤに近づく。 触れ合える距離に来ると、そっと、彼女の頬に触れる。 そして、突然のキス・・・。 「・・・んっ」 深く重なる唇にマヤの声が漏れる。 「・・・速水・・さん・・・」 途切れ、途切れに彼の名を呼ぶ。 唇から伝わる甘い痺れに力が抜ける。 「・・・これでも、俺に抱かれたいか?」 唇を放し、愛しそうに彼女を見つめる。 マヤは真澄の問いかけに迷う事なく頷いた。 真澄の中の何かが狂い始める。 ベットの上に彼女を寝かせ、身につけているものを一枚ずつ剥がす。 その度に恥ずかしそうに彼女が頬を染めた。 熱い瞳が彼女を見つめていた。 それは初めてマヤが見るもう一人の真澄だった。 その瞳に見つめられているだけで、体中が溶けそうになる。 頭の芯が真っ白になり、何も考えられない・・・。 真澄の唇がゆっくりと体中を這う。 細い、骨ばった長い指が彼女の体中を撫でる。 「・・・あっ・・・」 初めての感覚に吐息が漏れる。 そして、その感覚は段々強いものへと変わる。 彼女を裸体にし、じっと見つめる。 その肌の白さと艶かしさにドキッとする。 体中が火に焼かれたように熱さを増し、夢中で自分の衣服を脱ぎ、肌を合わせた。 「・・・あぁっっ」 初めての挿入に彼女の表情が歪む。 「・・・痛いか?」 ハッとし、腕の中の彼女を見つめる。 瞳に涙を耐え、首を左右に振る。 彼女が無理をしているのがわかる。 進入を止め、腰を引く。 そして、まだ、あまり潤っていない、彼女の花びらを口にする。 「・・あぁっ!」 突然の強い刺激に驚いたように声を上げる。 「・・・速・・水さ・んっ・・・」 真澄の唇が触れている事に気づくと、恥ずかしさで足を閉じようとする。 真澄はそれを許さず、両手で太腿を掴み、さらに足を開かせた。 薄っすらとピンク色に染まったマヤ自身がハッキリと見える。 真澄が与える感覚と見つめられているという羞恥心に脈が速くなり、下半身が熱くなる。 真澄はゆっくりと、時間をかけて彼女の中を舐めた。 甘い感覚に耐えるように唇を噛み、枕を強く掴む。 彼女の中は濡れていた。 吸いつくせない程の蜜が溢れ出し、蕾が大きくなる。 「・・・速水・・さんっ・・・私・・・っ」 潤んだ瞳でマヤが耐え切れなさそうに訴える。 マヤの限界が近い事を知ると、唇を離し、下半身を繋げる。 そして、彼を深い部分へ飲み込んでいく。 最初の進入の時とは違い、今度は甘い衝撃が体中を伝わった。 真澄が動く度にマヤの中の内壁が締め上げ、その甘い感覚に、夢の中を彷徨っているようだった。 段々、動きは早くなり、真澄自身がマヤの中で大きさを増す。 限界が近い事を知ると、真澄はマヤの中から出ようとした。 「・・・やっっ」 マヤが抵抗するように、真澄に足を絡める。 「・・・マヤ・・・」 驚いたように彼女を見つめる。 「・・・速水さんの全てが欲しいの・・・」 真澄を真っ直ぐに見つめ、口にする。 その言葉に、その瞳にどうかしてしまいそうだった。 「・・・マヤ・・・」 愛しそうに唇にキスをする。 そして、真澄は再びマヤの中で動き、限界を迎えた。 「・・・・あぁぁぁっっっ!!!!」 真澄の全てがマヤの中に注がれ、マヤはベットの上で崩れ落ちた。 そして、真澄も繋げたままマヤの上に崩れる。 部屋に二人の荒い呼吸が木霊する。 甘いけだるさが二人を包む。 真澄は繋がった場所が離れないようにそっと、マヤの横に移った。 マヤはまだ、自分の中にいる真澄を感じて幸せだった。 繋がった場所から彼の鼓動を感じる。 触れ合う素肌と素肌に愛しさが増す。 「・・・速水さん・・・」 嬉しそうに彼の名を呼ぶ。 「・・・うん?」 甘えたような彼女の声に表情が緩む。 「・・・私、忘れません・・・今夜の事は・・・」 華奢な腕が彼を包む。 「・・・もう少し、このままで・・・」 そう言い、マヤはゆっくりと瞳を閉じ・・・いつしか眠りについていた。 ・・・マヤ・・・。 彼女の寝顔を見つめ、切ない想いに駆られる。 ずっと、このまま抱いていたい・・・。 一つになっていたい・・・。 しかし・・・。 真澄には目の前の結婚をどうする事もできなかった。 本当は、彼女の言葉を聞いた時、自分も愛していると、告げたかった。 偽りのない気持ちを伝えたかった。 この夜が明けない事を祈った。 マヤと一つになっているこの時間が永遠に続く事を祈った。 だが・・・夜は明け・・・現実の時が再び二人を引き離す。 「・・・さよなら・・・速水さん・・・」 マヤは眠ったままの真澄を残して、一人ホテルを出た。 真澄に愛された想いを胸に歩き出す・・・。 紅天女に向かって・・・。 そのれから半月後、マヤは見事に紅天女を演じ、上演権を掴んだ。 そして、真澄は一月後、マヤへの想いを抱えたまま紫織と結婚をしたのだった。

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