西遊 記 女人 国 の 戦い。 西遊記 女人国の戦い あらすじ

西遊記 女人国の戦い

西遊 記 女人 国 の 戦い

滅多に口頭で人に映画を勧めることがない筆者でも、数年に一度 「これはぜひ観てほしい!」という作品に出会う。 それが全国拡大ロードショーではなく、公開規模が小さかったり企画上映での作品ともなるとなおのことだが、今年「2019中華最強映画まつり」で順次公開された『西遊記 女人国の戦い』がその1本だった。 筆者は本作を劇場で4回鑑賞して、4回とも嗚咽するように泣いた。 それぐらい心に深々と突き刺さる作品だったのだが、公開館数が極めて限定的だったので周りで「観た」という人は本当に極々限られていた。 ……うーむ。 全世界興収132億円というヒット作ながら、そして「西遊記」という人気シリーズでありながら、なぜ本作はこのような扱いなのか。 疑問が残るところだが、とにもかくにも4月3日にはBlu-ray&DVDがリリースされ、多くの人の手に届くことになった。 そこであえて言いたい。 「ぜひ、観てほしい!」と。 今回は、『西遊記 女人国の戦い』の魅力をじっくり紹介していきたい。 1:『西遊記』シリーズとは? まずは本作『西遊記』シリーズについて復習しよう。 続く第2作では孫悟空役がアーロン・クォックにバトンタッチし、初登場となる三蔵法師にウィリアム・フォンが扮した『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』を経て本作がシリーズ第3弾となる。 シリーズを通してソイ・チェンが監督を務めており、前作からクォック、フォン、シャオ・シェンヤン(猪八戒)、ヒム・ロー(沙悟浄)が続投している。 本作のサブタイトル「女人国の戦い」という文字を見て、もしかしたら抵抗感を感じる人もいるかもしれない(こればかりは原題が「女兒國」なので仕方なし)。 が、ちょっと待ってほしい! 美女だらけではあるものの、間違ってもそれが本作の売りということだけは絶対にないことを声を大にして言いたい! あくまで軸はアクションとドラマに置かれていて、本作の舞台であり女性しかいない国=女人国というのは、物語を動かす上で「必要」であってしっかり「機能している」ことを理解してほしい。 いや、むしろこのドラマこそ本筋と言っても過言ではない。 そのドラマパートを牽引するのが、三蔵法師と女人国女王陛下(チャオ・リーイン)の恋物語だ。 しかし三蔵法師は出家した身であり、女王陛下の気持ちに応えることはできない。 さらに女王陛下の育て人である国師(ジジ・リョン)は国を護るために三蔵一行を排除しなければならず、無情にも彼らに処刑宣告を下す。 ここで三蔵法師・沙悟浄・猪八戒がまさかの妊娠をするのだが(コメディ調ではあるものの、原作にも三蔵法師らが妊娠する描写がある)、この妊娠をめぐって物語は前半と後半で大きくその表情を変えることになる。 子を宿したことで三蔵法師にはこれまでに生まれ得なかった感情を抱くようになり、女王陛下との向き合い方にも変化が生じていく。 映画はこのパートを境にして三蔵法師と女王陛下により焦点を当てることになり、コメディ色を一切排して「ひとりを愛するのか、人々を愛するのか」という観点で宗教観を絡めながら進む。 それは俗世を離れた三蔵法師だけでなく、国を統べる運命を背負った女王陛下にも突きつけられるのだ。 3:セリフに頼らない、感涙の結末へ 国師の策略により苦海へと追放される三蔵法師と、三蔵法師と一緒に居ることを決意し彼の懐へと飛び込む女王陛下。 苦海で死線を彷徨った2人はやがて「来世で一緒に」なることを約束しながらとある場所へとたどり着くが、その代償として女人国全体に崩壊の危機が訪れてしまう。 終盤で描かれる怒涛のバトルの果てに、2人の思いが重なった瞬間に実は一切のセリフが用意されていない。 様々な感情が一気に押し迫るが、このシーンこそ本作の核心部にもなっている。 4:三蔵法師の一番の理解者・孫悟空 本作を語る上で、三蔵法師という人間を一番理解し最も近い距離で彼を救おうとするのがほかならぬ孫悟空だ。 これまでの「西遊記」といえば、孫悟空が悪さをして緊箍児(きんこじ)と呼ばれる金の輪を三蔵法師の法力によって締めつけられ、孫悟空がもんどりうつというのがイメージしやすい姿だろう。 それだけ三蔵法師を理解しているからこそ、孫悟空は「悪役になる」ことを決意しなければならなくなる。 そのきっかけとなるのが三蔵法師らの妊娠であり、孫悟空の行動から一気に本作は強いドラマ性を帯びていくことになる。 前半を占めていたコメディ調のテンポががらりと変わるのも、孫悟空が選んだ行動を真摯なまでに受け止めた結果なのだろう。 孫悟空といえば万物の理を超越する神通力が魅力で、もちろん本作でも途中途中のアクションやラストバトルでその力が存分に発揮されている。 ただ三蔵法師との関係性だけは、孫悟空のある意味人間以上に人間らしい心根と優しさが、顕著に表れていることにも注目してほしい。 悪役になると決断した際の表情や、女王陛下の存在に心揺らす三蔵法師を見つめる瞳の奥の哀しみは、特殊メイクに隠れていながらなおクォックの繊細な演技が光り輝いている。 5:ソイ・チェン節炸裂! 超絶怒涛のVFXアクション 本作はドラマパートが見どころになっているだけでなく、圧倒的スケールで描かれるド迫力のバトルシーンが近年稀にみるほどの高揚感を体感させ仕上がりになっている。 ヒトの形をしながらもその身の丈は山ほどもあり、もはや孫悟空たちなど米粒のような存在。 それでも全力で果敢に攻め込む孫悟空・猪八戒・沙悟浄を、水柱で易々と弾き返してしまうパワーを持っている。 VFXはハリウッド顔負けの完成度を誇り、言うなればこの一大スペクタクルシーンだけで元が回収できるのではないだろうか。 緩急を利かせながら孫悟空に追従するカメラワークのキレもあり、この迫力をスクリーンで堪能できたことは筆者にとって映画人生における財産になったほどだ。 6:一流スタッフが集結! 本作には世界各国から豪華スタッフが集結しているので、合わせて紹介したい。 素晴らしいカメラワークを見せてアクションをより鮮明に映し出したのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどピーター・ジャクソン作品の多くで第二班撮影監督を務めているリチャード・ブラック。 特殊メイクは『300 スリー・ハンドレッド』のショーン・スミス、美術は『タクシー運転手 約束は海を越えて』のチョ・ファソンが担当している。 そして音楽は前2作でハリウッドから『スパイダーマン3』などのクリストファー・ヤングを招いていたが、本作では日本から久石譲の音楽プロデューサー・小林雄が参戦。 三蔵法師と女王陛下にはゆったりとした旋律が与えられて耳になんとも優しい一方、バトルシーンではしっかりと打楽器系を打ち鳴らしてシーンそのものにさらなるインパクトを加えている。 筆者は終盤で答えを見出した三蔵法師と女王陛下に寄り添うピアノの音色が耳にこびりついており、ふとフレーズが脳裏をよぎっただけで目頭が熱くなるほど、鮮烈な印象を残すことになった。 このピアノの響きが、間違いなく2人の場面をより情感的に彩るエッセンスになったと確信した瞬間だ。 「そうでもないんじゃない?」と言われればそれまで(確かに前半のコメディパートはスベっている感は否めない)だが、迫力満点のアクションや濃厚なドラマは決して観て損ではないはず。 むしろ結末までたどり着いてもう一度見返せば、映像にしろ音楽にしろ、いかにラストに向かって綿密に伏線が張られているかより伝わってくるはず。 最後に、三蔵法師役のウィリアム・フォンと女王陛下役のチャオ・リーインは本作での共演を機に結婚へと至っている。 その点も踏まえて本作を鑑賞すると、より感動が深くなるのではないだろうか。 (文:葦見川和哉) 関連記事 ・ ・ ・ ・ ・.

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西遊記 女人国の戦い : 作品情報

西遊 記 女人 国 の 戦い

CONTENTS• 映画『西遊記 女人国の戦い』作品情報 【公開】 2019年1月19日(香港・中国合作映画) 【原題】 西遊記女兒国 The Monkey King 3 【原作】 『西遊記』 【監督】 ソイ・チェン 【キャスト】 ウィリアム・フォン、アーロン・クォック、シャオ・シェンヤン、ヒム・ロー、チャオ・リーイン 【作品概要】 中国の古典『西遊記』を映画化した「モンキー・マジック」シリーズ第3弾。 監督は香港の俊英ソイ・チェン。 最新VFX技術を駆使し、ファンタジーの世界を完全再現。 前作に引き続き今回も中国・香港を代表する美形俳優の豪華共演で送るスペクタクル・アドベンチャー。 映画『西遊記 女人国の戦い』のあらすじとネタバレ 天竺を目指し旅を続けている三蔵法師と孫悟空、猪八戒、沙悟浄。 雄大な大河を一隻の舟で下っていると川底から突如巨大魚が出現し、一行に襲いかかります。 天からの釈迦如来の助けもあり、間一髪、舟もろとも呑み込まれる寸でのところで逃げ果せます。 しかし安心する間もなく次は断崖絶壁に差し掛かり、あれよあれよと言う間に落下。 その途中、三蔵法師は一人の美しい女性と不思議な出逢いを果たします。 女性は凛々しい牝鹿に跨がり颯爽とその場から去っていきます。 一行は無事に森の中に着地しますが、猪八戒の姿が見当たりません。 猪八戒を探しながら三人は鬱蒼とした森へ分け入っていきます。 その頃、猪八戒は森の奥に女性の声を聞きつけ、助平心からその声の元を探り当てます。 するとそこでは美しい女性たちが水浴をしていました。 猪八戒は早速美男子の姿に変身し近づこうとしますが、怪力の彼女たちにあえなく痛めつけられてしまいます。 猪八戒の悲鳴を聞いた三蔵法師たちも気づけば武装した女性たちに取り囲まれています。 彼らの前に現れた女王というのが、何と先ほど三蔵法師が不思議な出逢いを果たした牝鹿の女性だったのです。 生まれて初めてみる男に興味を持ち始めている若き女王は国師の進言を退き、ひとまず尋問が行われることになります。 すぐに調査を開始すると、古文書にはやはり男は女を騙し、狂わせるという記述が明記されていました。 けれどもその文書には実は欠けた部分があったのです。 牢に閉じ込められた一行は、悟空の力で簡単に脱出に成功します。 空から国境を超えようとするものの、強力な境界を突き破ることが出来ずに押し戻されてしまいます。 仕方なく元の牢に戻り、別の脱出法を探ることに。 そこへ女王たちが尋問にやって来るのですが、三蔵法師に好意を持っている女王は一緒に脱出口を探すことを約束します。 翌朝、予定通り刑が執行されます。 しかし女王が事前に弓矢に細工を施し、三蔵法師たちは死んだふりをして何とか危機を乗り切りました。 女王たちと落ち合った三蔵法師たちは、女人国の女性たちが生命を授かったという河に秘密を探りに行きます。 そこで悟空が古文書の切れ端を見つけますが、魔法をかけられている古文書はすばしっこくてなかなか捕まえられません。 さらに河を守る二匹の巨大蠍が一行に襲いかかります。 ところが、三蔵法師、猪八戒、沙悟浄の三人が突然腹痛を訴え始めます。 何と河の水を飲むと妊娠してしまうというのです。 唯一人妊娠しなかった悟空は堕胎薬を探しに行きます。 悟空が堕胎薬を手に入れ戻ると、三蔵法師たちは母性に目醒め、お腹の子を産と言い出しているのです。 たまりかねた悟空は無理矢理薬を飲ませ、堕胎させます。 三人は落胆しますが、三蔵法師は特に後悔の念が拭えず、一人写経を始めます。 それをみた女王もたまらず写経に加わり、二人の仲はいよいよ深まります。 しかしそれも束の間、国師に見つかってしまい、三蔵法師は再び捕われてしまいます。 国師は死刑にはしないと約束しますが、三蔵法師は小舟に乗せられ、そのまま海へ放たれてしまいます。 寸でのところで牝鹿に跨がった女王が颯爽と現れ、小舟に乗り込みます。 思わぬことに国師も女人国の人々も動揺しますが、すでに遅く、二人の乗った舟は海の彼方へと流されていくのでした……。 三蔵法師と女王を乗せた小舟は、流されれば決して陸へは戻ってこられないという苦海を進んでいました。 すでに数日が経過し、喉の渇きと飢えが彼らの精神を疲弊させます。 すると三蔵法師が徐に語り始めます、「人は孤島。 漂流し続けるしかない。 外界には苦しみがあるが、喜びもある」。 その頃、女人国では困り果てた国師が悟空に神通力での捜索を依頼。 悟空はあらゆる空を飛び回り、三蔵法師と女王が乗る舟を必死で探しますが、一向に見つかりません。 「愛を知れば門は開く」三蔵法師が呟きます。 ところが、二人で外界へ出ようとした瞬間でした。 王女だけがなぜか境界を抜けられないのです。 辺りに暴風が吹き荒び、女人国の人々と王女は一瞬のうちに石化してしまいます。 三蔵法師はなすすべもなく、王女の石化は解けたものの意識が戻ることはありませんでした。 女人国の人々は、女王の意識が戻るように国を挙げて祈祷しました。 三蔵法師も女王の側に付きっきりで様子を見守ります。 悟空だけが旅の中断を心配していました。 すると三蔵法師の肩から袈裟がずり落ちてしまいます。 悟空が何度も付け直しても自然と外れてしまうのです。 悟空の危惧は的中するのですが、その夜、三蔵法師に観音菩薩から、「袈裟を付けた時に旅は再会する」というお告げがあったのです。 悟空もその言葉を信じて今は女王の回復を待つことにします。 一方、国師たちは祈祷を続けていましたが、突然大地が揺らぎ始め、河の神が出現します。 思わぬ出来事に国師の心は揺らぎますが、女王を守り国を支えるという使命を背負う国師は河の神の誘いを断ります。 拒絶された河の神は簡単に引き下がるはずもありません。 怒りが最高潮に上り、河の神は巨大魚に変身しあっという間に女人国を大津波で呑み込んでしまいます。 悟空と猪八戒、沙悟浄が応戦しますが歯がたちません。 釈迦如来が天から強力な光線を浴びせ、河の神は退治されたのでした。 女王の意識が戻ると、三蔵法師の肩にも袈裟が自然と付けられます。 出発の時です。 「また来世で……」運命的な邂逅の思い出を胸に天竺への長い旅を続けることを選んだ三蔵法師は涙を湛えながら、静かに呟きました。 映画『西遊記 女人国の戦い』の感想と評価 2019年は香港映画の注目作がいくつも公開されます。 中でも『 西遊記 女人国の戦い』の重要性はここ数年の香港映画を見渡してみても特筆すべきものです。 本作は『西遊記』を題材にしたファンタジー娯楽大作として十分すぎるくらい楽しめる作品ですが、それだけでは到底おさまりがつかない側面があります。 本作をより楽しむためにはまず 香港の歴史を知る必要があるでしょう。 1997年、中国に返還された後も特別行政区として自由と民主は維持されました。 ところが徐々に中国政府は直接支配の姿勢を強めるようになっていくのです。 すると香港では再独立を望むグループが増え始め、共産党の政治介入を非難するようになりました。 当然、中国側はさらに締め付けを強化します。 2014年に起きた「雨傘革命」は決定的でした。 独立を主張する民主派の暴動を鎮めるために軍が武力弾圧をしたのです。 この事件によってそれまで民主派だった人々も中国政府の力を恐れて親中派となっていきました。 香港の自由と民主は事実上失われてしまったのです。 こうした政治状況と並行して映画ビジネスも大きく変化しています。 香港映画界への影響と変化 『ザ・ミッション 非常の掟』(1999) 2004年に香港と中国の貿易が自由化すると、多くの作り手が新たな活路を求めて大陸向けの映画製作に舵を切り始めたのです。 さらに中国政府の検閲強化によって香港国内での製作本数自体が落ち込んでしまっているのが現状です。 香港映画には、50年代と80年代に黄金期がありますが、それは香港という都市に活気があったからで、時代の空気がそのまま映画の雰囲気をつくり、画面は自然と熱気を帯び始めました。 とは言え、香港に留まり続けている映画人も確かにいます。 『ザ・ミッション 非常の掟』(1999)で世界的注目を集めたジョニー・トー監督です。 彼の孤高の精神は作品のキャラクターたちにも受け継がれています。 カンヌの常連監督でもあるトー監督は後進の育成にも力を入れています。 参考映像:『アクシデント-意外-』(2009) 2009年のプロデュース作品『アクシデント-意外-』は停滞しつつあった香港映画に新しい流れを作り、大きな評価を得ました。 この作品を監督したのが本作『西遊記 女人国の戦い』のソイ・チェンです。 『アクシデント-意外-』の成功によってソイ・チェン監督は、有望な若手として香港映画の未来を一身に背負うことになったのでした。 ソイ・チェン監督の「西遊記」は現実を映し出す鏡 これまで80年代の香港映画を模倣するかのように鮮明でリアルなロケーション撮影に拘ってきたチェン監督が、最新のVFX技術を駆使して映像化した「西遊記」シリーズは、現実を映し出す鏡として寓話的な機能を果たしているように思います。 女人国の物語には間違いなく中国政府によって自由と民主を奪われた香港人たちの苦しみが投影されているでしょう。 そのため『女人国の戦い』はシリーズ中最も政治色の濃い作品にならざるを得ませんでした。 女人国の人々は外の世界を知りません。 同様に今自由を奪われている香港人たちも思想弾圧によって価値観が限りなく一辺倒に締め付けられています。 前世では自由の光に満ちていた香港も現世は暗闇です。 これまであまりに豊かな自由を享受しすぎたからでしょうか。 しかしここで思い出すべきなのは映画のラストで三蔵法師が呟いた一言です。 「また来世で……」三蔵法師は悟空と出逢うために何度も転生を繰り返しています。 何度も苦難を重ねなければ現世での幸福は得られません。 来世を志向する三蔵法師のこの言葉には現代の香港人への強いメッセージが込められているのだと思います。 これまで香港が歴史のどんな局面でも繁栄し続けてきたのは、たとえ苦境にあってもより幸福な来世を望む心を決して失わなかったからです。 物理的な自由は失っても、精神の自由まで失う必要はありません。 香港人の上昇志向はあの高層ビル群をみれば明らかです。 さらなる高みを目指して香港人は何度でも転生するのです。 ソイ・チェン監督の『西遊記 女人国の戦い』はそんな未来(来世)への大きな希望となっているのです。 まとめ 一見、大衆的な娯楽作品にしかみえない本作にもソイ・チェン監督の並々ならぬ情熱が随所に込められています。 ただのおとぎ話にしないところにこの監督の創意と工夫、そして覚悟があります。 本作の画面をみていると、ジョン・ウー監督を筆頭に才能ある監督たちがひしめき合い、目まぐるしい勢いで映画製作に打ち込んでいた80年代の香港映画の熱気が再燃しているかのような錯覚を覚えてしまいます。 この作品をきっかけとして香港映画が自由と民主(活気)を取り戻してくれることを祈るばかりです。

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西遊 記 女人 国 の 戦い

滅多に口頭で人に映画を勧めることがない筆者でも、数年に一度 「これはぜひ観てほしい!」という作品に出会う。 それが全国拡大ロードショーではなく、公開規模が小さかったり企画上映での作品ともなるとなおのことだが、今年「2019中華最強映画まつり」で順次公開された『西遊記 女人国の戦い』がその1本だった。 筆者は本作を劇場で4回鑑賞して、4回とも嗚咽するように泣いた。 それぐらい心に深々と突き刺さる作品だったのだが、公開館数が極めて限定的だったので周りで「観た」という人は本当に極々限られていた。 ……うーむ。 全世界興収132億円というヒット作ながら、そして「西遊記」という人気シリーズでありながら、なぜ本作はこのような扱いなのか。 疑問が残るところだが、とにもかくにも4月3日にはBlu-ray&DVDがリリースされ、多くの人の手に届くことになった。 そこであえて言いたい。 「ぜひ、観てほしい!」と。 今回は、『西遊記 女人国の戦い』の魅力をじっくり紹介していきたい。 1:『西遊記』シリーズとは? まずは本作『西遊記』シリーズについて復習しよう。 続く第2作では孫悟空役がアーロン・クォックにバトンタッチし、初登場となる三蔵法師にウィリアム・フォンが扮した『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』を経て本作がシリーズ第3弾となる。 シリーズを通してソイ・チェンが監督を務めており、前作からクォック、フォン、シャオ・シェンヤン(猪八戒)、ヒム・ロー(沙悟浄)が続投している。 本作のサブタイトル「女人国の戦い」という文字を見て、もしかしたら抵抗感を感じる人もいるかもしれない(こればかりは原題が「女兒國」なので仕方なし)。 が、ちょっと待ってほしい! 美女だらけではあるものの、間違ってもそれが本作の売りということだけは絶対にないことを声を大にして言いたい! あくまで軸はアクションとドラマに置かれていて、本作の舞台であり女性しかいない国=女人国というのは、物語を動かす上で「必要」であってしっかり「機能している」ことを理解してほしい。 いや、むしろこのドラマこそ本筋と言っても過言ではない。 そのドラマパートを牽引するのが、三蔵法師と女人国女王陛下(チャオ・リーイン)の恋物語だ。 しかし三蔵法師は出家した身であり、女王陛下の気持ちに応えることはできない。 さらに女王陛下の育て人である国師(ジジ・リョン)は国を護るために三蔵一行を排除しなければならず、無情にも彼らに処刑宣告を下す。 ここで三蔵法師・沙悟浄・猪八戒がまさかの妊娠をするのだが(コメディ調ではあるものの、原作にも三蔵法師らが妊娠する描写がある)、この妊娠をめぐって物語は前半と後半で大きくその表情を変えることになる。 子を宿したことで三蔵法師にはこれまでに生まれ得なかった感情を抱くようになり、女王陛下との向き合い方にも変化が生じていく。 映画はこのパートを境にして三蔵法師と女王陛下により焦点を当てることになり、コメディ色を一切排して「ひとりを愛するのか、人々を愛するのか」という観点で宗教観を絡めながら進む。 それは俗世を離れた三蔵法師だけでなく、国を統べる運命を背負った女王陛下にも突きつけられるのだ。 3:セリフに頼らない、感涙の結末へ 国師の策略により苦海へと追放される三蔵法師と、三蔵法師と一緒に居ることを決意し彼の懐へと飛び込む女王陛下。 苦海で死線を彷徨った2人はやがて「来世で一緒に」なることを約束しながらとある場所へとたどり着くが、その代償として女人国全体に崩壊の危機が訪れてしまう。 終盤で描かれる怒涛のバトルの果てに、2人の思いが重なった瞬間に実は一切のセリフが用意されていない。 様々な感情が一気に押し迫るが、このシーンこそ本作の核心部にもなっている。 4:三蔵法師の一番の理解者・孫悟空 本作を語る上で、三蔵法師という人間を一番理解し最も近い距離で彼を救おうとするのがほかならぬ孫悟空だ。 これまでの「西遊記」といえば、孫悟空が悪さをして緊箍児(きんこじ)と呼ばれる金の輪を三蔵法師の法力によって締めつけられ、孫悟空がもんどりうつというのがイメージしやすい姿だろう。 それだけ三蔵法師を理解しているからこそ、孫悟空は「悪役になる」ことを決意しなければならなくなる。 そのきっかけとなるのが三蔵法師らの妊娠であり、孫悟空の行動から一気に本作は強いドラマ性を帯びていくことになる。 前半を占めていたコメディ調のテンポががらりと変わるのも、孫悟空が選んだ行動を真摯なまでに受け止めた結果なのだろう。 孫悟空といえば万物の理を超越する神通力が魅力で、もちろん本作でも途中途中のアクションやラストバトルでその力が存分に発揮されている。 ただ三蔵法師との関係性だけは、孫悟空のある意味人間以上に人間らしい心根と優しさが、顕著に表れていることにも注目してほしい。 悪役になると決断した際の表情や、女王陛下の存在に心揺らす三蔵法師を見つめる瞳の奥の哀しみは、特殊メイクに隠れていながらなおクォックの繊細な演技が光り輝いている。 5:ソイ・チェン節炸裂! 超絶怒涛のVFXアクション 本作はドラマパートが見どころになっているだけでなく、圧倒的スケールで描かれるド迫力のバトルシーンが近年稀にみるほどの高揚感を体感させ仕上がりになっている。 ヒトの形をしながらもその身の丈は山ほどもあり、もはや孫悟空たちなど米粒のような存在。 それでも全力で果敢に攻め込む孫悟空・猪八戒・沙悟浄を、水柱で易々と弾き返してしまうパワーを持っている。 VFXはハリウッド顔負けの完成度を誇り、言うなればこの一大スペクタクルシーンだけで元が回収できるのではないだろうか。 緩急を利かせながら孫悟空に追従するカメラワークのキレもあり、この迫力をスクリーンで堪能できたことは筆者にとって映画人生における財産になったほどだ。 6:一流スタッフが集結! 本作には世界各国から豪華スタッフが集結しているので、合わせて紹介したい。 素晴らしいカメラワークを見せてアクションをより鮮明に映し出したのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどピーター・ジャクソン作品の多くで第二班撮影監督を務めているリチャード・ブラック。 特殊メイクは『300 スリー・ハンドレッド』のショーン・スミス、美術は『タクシー運転手 約束は海を越えて』のチョ・ファソンが担当している。 そして音楽は前2作でハリウッドから『スパイダーマン3』などのクリストファー・ヤングを招いていたが、本作では日本から久石譲の音楽プロデューサー・小林雄が参戦。 三蔵法師と女王陛下にはゆったりとした旋律が与えられて耳になんとも優しい一方、バトルシーンではしっかりと打楽器系を打ち鳴らしてシーンそのものにさらなるインパクトを加えている。 筆者は終盤で答えを見出した三蔵法師と女王陛下に寄り添うピアノの音色が耳にこびりついており、ふとフレーズが脳裏をよぎっただけで目頭が熱くなるほど、鮮烈な印象を残すことになった。 このピアノの響きが、間違いなく2人の場面をより情感的に彩るエッセンスになったと確信した瞬間だ。 「そうでもないんじゃない?」と言われればそれまで(確かに前半のコメディパートはスベっている感は否めない)だが、迫力満点のアクションや濃厚なドラマは決して観て損ではないはず。 むしろ結末までたどり着いてもう一度見返せば、映像にしろ音楽にしろ、いかにラストに向かって綿密に伏線が張られているかより伝わってくるはず。 最後に、三蔵法師役のウィリアム・フォンと女王陛下役のチャオ・リーインは本作での共演を機に結婚へと至っている。 その点も踏まえて本作を鑑賞すると、より感動が深くなるのではないだろうか。 (文:葦見川和哉) 関連記事 ・ ・ ・ ・ ・.

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